5月のおはなし ~上品な人になりましょう~

新年度も始まり新たに目標を立てられた方も多いのではないでしょうか。
早起きをして朝活(アサカツ=仕事の前に趣味や健康のための時間を設けること)しよう!とか、ついつい食べ過ぎてしまう甘いものの頻度を半分に減らそう!などなど毎年この時期に立てた目標は数知れず、その中で達成できた数は・・・内緒です(笑)

ところで仏教的にオススメな目標は?と尋ねられたらなんと答えるか。私としては

【上品(じょうぼん)を目指しましょう】 と答えようと思います。

浄土教には数多の衆生(=人間)が持つ性質に合わせて、九種類の極楽往生があると説かれており、その内訳は上・中・下の三つの品位に、それぞれ上生・中生・下生があるので上品上生から下品下生まで、3×3の九つになるとされています。

それぞれの違いについて、字数の関係で全部は説明できませんが一部を抜粋しますと
『上品上生(じょうぼんじょうしょう)』三心(至誠心、深心、廻向発願心)に象徴される往生を願う心を持ち、大乗方等経典を読誦する人。
『中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)』何時でも八戒を保ち、具足戒もしくは沙弥戒を守り規律正しい行動が出来る人。
『下品上生(げぼんじょうしょう)』 大乗方等経典を誹謗しないが、悪業を働き、尚且つそれに恥じ入ることのない人。
『下品下生(げぼんげしょう)』五逆罪や十悪を所作し、不善を行う人。
とあり、これらに基いて極楽に往生する過程が違い、その早さも違ってくるのだとされています。
これらを九品(くぼん)(または三三品)と言い、ここから現代語における「上品(じょうひん)」「下品(げひん)」へと変化していったと言われています。
さて下品下生には罪とか悪という言葉が見受けられますので、いわゆる悪い人のことだと分かります。
そんな下品下生の人でも、臨終に際し一心に阿弥陀仏を念じれば八十億劫の生死の罪を除き、極楽の蓮華の中に生まれ、長い年月を経て仏性が開花するというのです。

そしてまた、下の下でも極楽へ行けるなら上を目指さなくても良いだろう、悪い人で上等!と開き直ることもいけません。
生涯において一切の悪事を行わない、どんな小さな嘘やズルもしたことがない!という人はそう多くないでしょう。
だからこそ、万人を救って下さる仏さまの慈悲に感謝し、それに見合うよう自己を高める、つまり上品(じょうひん)な振る舞いをいつも心がけ、その結果として上品上生に至るのを目指すことが大切なのではないでしょうか。

東叡山寛永寺 教化部

開山堂境内『阿弥陀堂』安置の阿弥陀如来坐像 こちらの印相(手の組み方)は上品上生を表しています